Tableau社が買収したEmpirical Systems社とはどんな企業なのか #tableau
はじめに
大阪オフィス唯一のDI部メンバー、tamaです。
米国時間6月13日、Tableau Software(Tableau社)は、Empirical Systems社という企業を買収することを発表しました。Tableau社は、2016年にHyPer社、2017年8月にClearGraph社という自然言語処理技術を扱う企業を買収しています。今回買収することになったEmpirical Systems社はどのような企業なのでしょうか。そして、この買収はTableauという製品にどのような効果をもたらすのでしょうか。Empirical Systems社の公式サイトの情報をメインに、見ていきたいと思います。
- Tableau Acquires Empirical Systems | Tableau Software
- Tableau Software - Tableau Acquires Empirical Systems
- Empirical Systems
Empirical Systems社について
概要
※公式サイトより
Empirical Systems社は、2016年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の卒業生3人で設立されました。
MITには、Probabilistic Computing Projectというプロジェクトがあります。「Probabilistic Computing」という技術を使用した、新世代の分析システムを開発しているプロジェクトであり、「Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory」と「Department of Brain and Cognitive Sciences」が共同で開催しています。
Empirical Systems社は、このプロジェクトからスピンアウトして誕生しました。
参考
- MIT Probabilistic Computing Project – http://probcomp.csail.mit.edu
- Home Page | MIT CSAIL
- Welcome to Brain and Cognitive Sciences | Brain and Cognitive Sciences
何をしている企業なのか
Empiricalという分析システムを開発しています。
Empiricalとは
構造化された表データ(スプレッドシート、DBのテーブル、CSVなど)を自動的にモデル化し、これらのモデルに対して問い合わせを行い、データの統計的な洞察を得ることができる分析エンジンです。PythonやR言語から呼び出すことが可能で、スプレッドシートやVIツールと統合したり、別アプリケーションに組み込むこともできます。
Empiricalの分析処理(モデリング、クエリー)はリアルタイムで行われます。そのため、利用者はインタラクティブな分析を行うことができます。
Empiricalは、ビジネスユーザーにとっては統計学者の代わりのような存在となります。逆に、統計学者にとってのEmpiricalは、分析において日常的に行う退屈な作業を自動化してくれる存在となります。
どのようなデータ・分析ができるのか
公式サイトには、一例として下記のように記載されています。
- セールス
- 営業チャンスを増やす要因を理解し、ベンチマーキングを何度も実行する。
- マーケティング
- 動的なターゲティング、キャンペーンの最適化
- 人事
- 従業員の退職予測、採用における募集や報酬の予測
- プロダクトマネジメント
- ユーザーの行動パターンを見つけ、新しい機能に対する仮設を立てる
- 臨床試験
- 副作用の特定、試験区域の選択、医師の採用
- IoT
- デバイスライフサイクルの理解、信号の相関、データのスコアリング
- ビル管理
- 類似建造物の特定、資本増強のためのwhat-if分析、占有シミュレーション
他の機械学習ツールとの違い
Empiricalは機械学習やディープラーニングを搭載した分析システムと比較されがちです。ただ、そういったシステムは、大抵ビッグデータが必要で、データに対するシンプルな問いを持っておく必要があります。(「この広告をクリックするのは、どんなユーザーか?」など)
しかし、実際の現場のほとんどでは、中〜小規模の構造化データを持っています。Empiricalは、こういった種類のデータ向けに設計されています。
この買収によって、Tableauは今後どうなるか
Tableau社のプレスリリースを読む限り、Empirical SystemsがTableauに対して具体的にどう反映されるかは言及されていません。
Tableauユーザーの中で、周到に準備されたビッグデータを扱っているユーザーはまだまだ少ないと思われます。普通のRDBのテーブルとか、Excelファイルとかを相手に分析しているユーザーの方が多いのではないでしょうか。
そこに対して、Empiricalは中小規模の構造化データに対して統計的な分析ができると言っています。想像の範疇を出ないのですが、TableauでExcelを読み込んだ時に、Empiricalによって、本来はデータサイエンスの技術がないと取り出せないような、データの統計的な特徴や傾向が分かれば、BIツールとしてとても強力になるのではないでしょうか。また、これがTableau Serverでも使用できたら、その結果がユーザー同士で共有することもできそうです。
Empiricalが、Tableauにどのような形で反映されるのか非常に楽しみです。
おわりに
自然言語処理と新世代の分析技術を手に入れたTableau、今後どういった新機能が登場するのか、楽しみですね。